住宅ローンを組むとき、
「変動金利にするか、固定金利にするか」で悩む人は多いと思います。
特にここ数年は、
変動金利の低さが圧倒的で、
「変動のほうが得に決まっている」
「どうせ日本は金利が上がらない」
そんな空気が長く続いていました。
しかし、
長期金利1.800%、
政策金利0.75%が現実味を帯びてきた今、
変動金利を“なんとなく”で選ぶのは危険な時代に入っています。
私は銀行員時代、住宅ローンの相談を日々受けていましたが、
実は「変動金利そのもの」が悪いわけではありません。
問題なのは、
「変動金利を選ぶ人が“無意識にやってしまう行動”」です。
今回は、
「これは本当に多い」
「将来きつくなる可能性が高い」
という行動だけを厳選してお伝えします。
■大前提:変動金利は「リスク商品」ではないが「覚悟がいる商品」
最初に、はっきりさせておきます。
変動金利は
・危険
・ギャンブル
・無謀
ではありません。
ただし、
金利が上がる可能性を“理解した上で選ぶ人向け”
の住宅ローンです。
この前提を忘れると、
後悔する確率が一気に上がります。
やってはいけない行動①「借りられる上限まで借りる」
これは、一番多くて、一番危険です。
銀行が提示する
「借りられる金額」は、
今の金利が続いた場合
最低限返せそうなギリギリのライン
で計算されています。
●ありがちなケース
- 年収600万円
- 借入可能額:4,500万円
- 「大丈夫ですよ」と言われてそのまま借りる
これ、
変動金利が0.5%→1.5%になった瞬間、家計が一気に重くなります。
金利1%上昇で、
4,500万円・35年ローンなら
月返済+2万円以上。
ボーナスや昇給で吸収できる人もいますが、
教育費・車・修繕費が重なると、一気に苦しくなります。
やってはいけない行動②「今の返済額だけを見て安心する」
変動金利を選ぶ人ほど、
「今、余裕があるから大丈夫」
と言いがちです。
でも住宅ローンは、
“今”ではなく“20年後”まで続く支出。
●現場で本当に多い勘違い
- 子どもはまだ小さい
- 教育費は先の話
- 車は今は1台
でも現実は、
- 教育費ピーク
- 車2台
- 修繕費・固定資産税
これらが金利上昇と同時期にやってくる。
今の余裕は、
将来の余裕を保証してくれません。
やってはいけない行動③「金利が上がったらその時考えればいい」
これも非常によく聞きます。
「上がったら固定にすればいいですよね?」
残念ですが、
多くの場合、その時は“一番条件が悪いタイミング”です。
金利が上がった後は、
- 固定金利はすでに高い
- 借り換え条件が悪化
- 手数料もかかる
つまり、
逃げ道は思っているほど広くない
ということ。
「その時考える」は、
「手遅れになってから考える」
になりやすいのが現実です。
やってはいけない行動④「5年ルール・125%ルールを過信する」
変動金利には、
- 5年ルール(返済額据え置き)
- 125%ルール(上昇幅の上限)
があります。
これを知って、
「急に返済が跳ね上がることはない」
と安心する人がいますが、これは半分間違い。
●本当の落とし穴
返済額が据え置かれている間、
- 利息が増えて
- 元本が減らず
- 未払利息が積み上がる
という状態になることがあります。
表面上は安心でも、
中身は確実に悪化している。
やってはいけない行動⑤「変動=得と決めつける」
過去20年を見ると、
確かに変動金利は“結果的に得”でした。
でもそれは、
金利が下がり続けた時代だったから
です。
今は、
- 金利は底
- 上がる余地しかない
- 下がる理由が見えない
という局面。
「過去は得だった」は、
未来の保証にはなりません。
■では、変動金利を選んでもいい人はどんな人?
ここまで読むと、
「じゃあ変動はダメなの?」
と思うかもしれません。
そんなことはありません。
●変動金利に向いている人
- 借入額をかなり抑えている
- 金利1.5〜2.0%でも耐えられる
- 余剰資金がある
- 返済額が上がっても冷静でいられる
こういう人は、
変動金利でも問題ありません。
■すでに変動金利を選んでいる人が今すべきこと
不安になりすぎる必要はありません。
やるべきことは3つだけです。
① 金利が1%上がった場合の返済額を知る
② 生活費6〜12か月分の現金を確保する
③ 繰上返済は“余裕資金”で行う
これだけで、
金利上昇時代の耐久力は大きく変わります。
まとめ|変動金利は「覚悟を持って選ぶ人」の味方
変動金利が悪いのではありません。
「何も考えずに選ぶこと」
これが一番のリスクです。
- 借りすぎない
- 今だけで判断しない
- 将来を前提に考える
これができる人にとって、
変動金利は今後も十分選択肢になります。
金利が動く時代だからこそ、
住宅ローンは「感覚」ではなく「設計」。
この記事が、
あなたの住宅ローン選びのヒントになれば幸いです。


コメント