✅ はじめに
共働き世帯が増える今、住宅購入の相談でよく聞かれるのが
「ペアローンと収入合算、どっちが得なんですか?」という質問です。
住宅ローンは「誰が」「どのように」借りるかによって、
借入額・税制優遇・将来のリスクが大きく変わります。
私自身、銀行員として数多くの夫婦のローンを担当してきましたが、
実際には「仕組みをよく理解せずに契約して後悔する」ケースも少なくありません。
この記事では、共働き夫婦が知っておきたい住宅ローンの基本パターンと、
ペアローンと収入合算の違いを、具体的にわかりやすく解説します。
🧭 1. 共働き夫婦の住宅ローン、選べる3つの組み方
まず、夫婦で家を買う場合のローンの組み方は大きく3パターンあります。
| パターン | 内容 | 主なメリット | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| ① 単独ローン | 夫または妻のどちらかが借主 | 手続きがシンプル・責任が一人に限定 | 年収が十分に高い方 |
| ② 収入合算 | 片方が主債務者、もう一方の収入を合算 | 借入可能額がアップ | 一方の収入が少し足りない夫婦 |
| ③ ペアローン | 夫婦それぞれがローン契約を結ぶ | 控除も2人分、対等に負担 | 共働きで年収が近い夫婦 |
最初に、「どのタイプが自分たちのライフスタイルに合うか」を整理しておくことが大切です。
💡 2. 「収入合算」とは?補助的に使うローンの形
収入合算とは、主債務者1人のローンに、配偶者の収入を合算して審査を受ける方法です。
ローン契約は1本なので手続きが簡単で、共働き夫婦によく利用されています。
✅ メリット
- 合算することで借入可能額が増える
- 契約は1本なので管理が楽
- 名義が1人のため登記・相続もシンプル
⚠️ デメリット
- 配偶者が連帯保証人(または連帯債務者)となるため、返済不能になっても責任が発生
- 住宅ローン控除は主債務者のみ(夫婦2人分の控除は不可)
💬 銀行員の視点
「夫の年収だけでは少し足りないけど、妻の収入を加えれば十分通る」
というケースで有効。
ただし、妻の収入が産休・育休などで一時的に減る可能性を考慮しておくのが重要です。
🏦 3. 「ペアローン」とは?対等に借りる2本立てのローン
ペアローンは、夫婦がそれぞれローン契約を結び、2人で返済していく仕組みです。
それぞれが主債務者となり、別々のローンを契約します。
✅ メリット
- 借入額を大きくできる(収入を単純に合算できる)
- 住宅ローン控除が2人分受けられる
- お互いが主債務者として対等に負担
⚠️ デメリット
- 契約が2本になるため、事務手続き・諸費用が2倍近くかかる
- どちらかが死亡・離婚などの場合に返済リスクが高い
- 万一の際にどちらの持ち分をどう処理するかでトラブルになる可能性も
💬 銀行員の視点
ペアローンは「共働きで年収が近い」夫婦には最もバランスが良い方法です。
ただし、どちらかが働けなくなった時の備え(保険や貯蓄)は必須です。
📊 4. ペアローン vs 収入合算 比較表
| 比較項目 | ペアローン | 収入合算 |
|---|---|---|
| 契約本数 | 2本(夫婦それぞれ) | 1本 |
| 借入限度額 | 高い | 中程度 |
| 手続き・諸費用 | 多い・高い | 少ない・安い |
| 控除の対象 | 夫婦それぞれ | 主債務者のみ |
| リスク分担 | お互いが債務者 | 主債務者が中心 |
| 向いている人 | 共働きで収入が近い夫婦 | 一方の収入を補助的に使いたい夫婦 |
👉 まとめると、
- 「借入額を増やしたい」「2人で家を買いたい」ならペアローン
- 「手続き簡単」「責任を軽くしたい」なら収入合算
が基本の選び方です。
🧮 5. 実例で比較:夫600万円+妻500万円のケース
| 項目 | 収入合算 | ペアローン |
|---|---|---|
| 借入可能額 | 約8,000万円 | 約9,000万円 |
| 控除 | 主債務者のみ | 夫婦2人分 |
| 諸費用 | 約100万円 | 約130万円 |
| 万一のリスク | 主債務者が中心 | 双方に債務残る |
→ 借入可能額と控除を重視するならペアローン、
→ 手間とリスクを抑えたいなら収入合算、
という選び方が現実的です。
🧠 6. 「どっちが得か?」の結論はライフプラン次第
共働き夫婦のローン選びで最も大切なのは“今の収入”ではなく“今後の見通し”です。
- 出産・育児・転職などで収入が変動しそう → 収入合算が安心
- 共働きを続けて将来も安定した収入を得られそう → ペアローンが有利
- 万一に備えてシンプルな責任関係を望む → 単独ローンも選択肢
💬 銀行員のアドバイス
「借りられる額」ではなく「返し続けられる額」で考える。
これが、共働き夫婦がローンで失敗しない最大のコツです。
✅ 7. まとめ:夫婦ローンは“安心して返せる形”で選ぼう
| 優先したいこと | 向いているローンタイプ |
|---|---|
| 借入額を最大化したい | ペアローン |
| 手続き・管理をシンプルにしたい | 収入合算 |
| 将来のリスクを最小化したい | 単独ローン |
ペアローンも収入合算も「どちらが得か」だけでは決められません。
家族の将来の働き方・子育て計画・ライフプランを含めて“安心して返せる形”を選ぶことが、結果的に最もお得です。
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💬 筆者コメント
住宅ローンは「家を建てる」ためのものではなく、「安心して暮らす」ための道具です。
夫婦それぞれの働き方や人生設計に合ったローン選びを、銀行員の立場からしっかりサポートします。


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